9月24日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、話題の書籍「悩みは欲しがれ」の著者であり、株式会社トーチリレーの代表を務める神保拓也をゲストに迎え、人の心に火を灯す「トーチング」を紹介した。
カタールW杯が目前に迫る中、攻撃のバリエーションや守備の連携など、まだまだ攻守ともに様々な悩みを抱える日本代表。本番までにどれだけ課題を解消できるのかがグループリーグ突破のカギとなる。しかし、トーチングを提唱する神保によれば、物事がうまくいかないときや、あれこれ苦しんでいるときこそ、成長のチャンスだという。

トーチとはたいまつのことで、トーチングとは「火を灯す」ことを指している。スタジオに迎えられた神保は、トーチングについて、「端的に言うと、人の悩みに一生懸命向き合い、その人の心に火を灯すことを目的とした面談のことです」と説明した。
私生活や仕事、人間関係に恋愛まで、人生には悩みがつきもの。神保は質問を通じて相手の悩みを1枚ずつ剥がしていき、悩みの原因を特定することで相手の心に火を灯していく。つまり、トーチングとは単なるお悩み相談ではなく、悩みの本当の所在地を突き止めるアプローチ手法といえる。
神保はサッカーにおいても、チームの抱えている悩みの原因を特定しないまま練習をしても、根本的な解決にはならないと主張。「問題がどこにあるのか特定できて、はじめて正解が対になって出てくる」と、“問題解決”よりも“問題設定”を重視するトーチングの基本的な考え方を明かした。
例えば、ディフェンスが弱いチームの場合、解決策としてディフェンス能力の高い選手の獲得という安易な方法を選んでしまいがちだが、根本の原因を見つけられなければ正しい答えにはたどり着けない。神保は「もしかしたら、根本的な原因がボランチとの連携や前線の選手にあるかもしれない」とし、「ディフェンスに関して何に悩んでいるのか選手全員に問いかけて、悩みの原因を突き止めることができれば課題を乗り越えられるし、結果的に連携が強まるなどのプラスの効果もあると思います」と指摘した。

スタジオでは、悩みの原因を見つけることの重要性を説く神保が、実際にトーチングを実践してみることに。対象者は勝村政信と共に番組のMCを務めるテレビ東京の森香澄アナウンサー。勝村や解説の北澤豪が見守る中、神保は森アナが抱える「今後の方向性」という悩みに向き合っていく。
入社4年目の森アナは、バラエティー番組への出演も多く、ニュースが読めないアナウンサーと思われがちだという。「もうちょっと賢く凛としたアナウンサーに見られるためにはどうしたらいいでしょうか?」と問いかける森アナに対し、神保はいくつかの質問を投げかけながら、「誰に賢く見られたいのか」という根本的な部分に切り込んでいく。さらに、賢い=ニュース番組という式にも疑問を呈し、トーチング的なアプローチで悩みを解決に導いていった。
そんな神保のトーチングに、勝村も拍手をしながら「素晴らしい!」と絶賛。森アナも「前に進む手立てを一個見つけられたような、前向きな気持ちになれました」と笑顔を浮かべていた。
さらに、神保はトーチングを行う上での“基本姿勢”を伝える。大事なのは、他人の悩みであっても自分のことと捉えて、悩みと向き合うこと。そうすることで、相手と同じ目線に立ち、解決に向けた有用なアドバイスができるという。また、部下や後輩の相談に対し、「自分の若い頃は……」や「そんなのは悩みに入らない」など、説教をしてしまうことがあるが、トーチングにおいては最大のNG行為。神保は「悩み相談って一歩間違えると相手の心の火を消してしまうことがある」と注意を促した。
また、トーチングは個人だけではなく、企業やスポーツチームなどの組織にも有効。特にチームの連帯感を強めるためには、目標よりも悩みを全員で共有し、それぞれの選手が「1人ではない」という感覚を持つことが大切なのだとか。日本サッカーではW杯においてベスト8以上を目標に掲げているが、神保は「目標共有はもちろん大切ですが」と前置きしながら、「目標共有以上に悩みの共有ができている組織は、本当の意味での一致団結した組織になると思っています」と語った。
一方、北澤は悩みの共有について、海外選手の例を出す。日本人選手はあまりプライベートをピッチに持ち込まないが、海外選手は悩んでいる選手に積極的に声をかけて、悩みを共有する傾向にあるそうで、「海外では比較的、悩みを一緒に話すのがチームメイトだという認識がある」と話した。
悩みは若手もベテランも誰もが抱えているもの。北澤は「ちょっと世代が違ったりすると“お前、そんなのできないのか”って言ってしまうケースは多いと思うので、特に指導者などは選手と同じ目線になることを当たり前にしていかなければいけないと思います」と、チーム全体で悩みを共有することの大切さを訴えた。