“クセ“の裏にある人間性を見て欲しい 〜『千鳥のクセがスゴいネタGP』演出PがTVerスピンオフに込める思い

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TVerでは、「配信限定!オリジナル企画」として、『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系全国ネット、毎週木曜21:00〜)のスピンオフ番組を配信中。コントに登場するキャラクターがMCを務める企画や、芸人たちの下積み時代を支えたアイデア料理を披露する「クセがスゴい飯GP」など、TVerでしか見られない独特な切り口の企画となっている。

今回は、番組で演出を務める名城(なしろ)ラリータさんにインタビュー。作り手として本企画に感じる魅力、そしてTVerへの期待について伺った。

本当の意味で「クセがスゴすぎるネタ」を届ける

――『千鳥のクセがスゴいネタGP』TVerスピンオフは、どんなコンセプトで制作されていますか?

名城ラリータさん
名城ラリータさん

番組自体は「クセがスゴいネタ」とタイトルに付けながらも、テレビで放送するネタとしてある程度ふるいにかけています。そのため、「このネタ、地上波ではどうだろうか」とこれまで見送っていたような、本当の意味で「クセがスゴすぎるネタ」を届けるというコンセプトで制作しています。

――見取り図扮する「南大阪のカスカップル」など、芸人さんたちがコントで演じるキャラクターがMCとしてコントに突っ込みを入れる企画が人気ですね。

本来はコントを見て突っ込むって、なかなか芸人さん個人としてはやりづらいことと思うんです。キャラクターになりきることによって、その人の姿を超えた振る舞いができるようになると思います。

――「クセがスゴい飯GP」でも、芸人さんたちの知られざる素顔や人となりが垣間見えて、とても魅力的です。

いまは下積み時代の食事にスポットを当てていますが、今後は劇場入りの前にいつも立ち寄っているお店のご飯にスポットを当てたり、住む部屋や給与明細とか、芸人さんの人となりがもっと伝わる企画をやっていきたいですね。ネタを紹介するという基本的な軸はありますが、スピンオフでは、ネタの「クセ」のもとになっている、芸人さんそれぞれが持つ世界観の魅力を発信していきたいと思っています。

――制作者として、TVer限定コンテンツの魅力はどんなところにありますか?

今回のスピンオフのような企画をテレビでやろうとすると“説明”の段階が必要なんですが、 TVerの場合はみなさんすでに番組の趣旨を理解してもらえているのと、尺も10分と短めに決まっているので、割り切って最初からキャラクターを全開にして押し出していけるのが魅力ですね。短い時間だからこそ、演じる芸人さんもキャラクターに没入しやすい。ネタ以外のところで、芸人さんたちが演じるキャラクターのことを知ってもらえるチャンスがあるということは大きいと思います。

――TVerでの配信が番組の作り方に影響を及ぼした部分はありますか?

かなりありますね。いま『クセスゴ』とともに担当している『全力!脱力タイムズ』では、本編をなるべくリアルタイムで見てもらえるよう番組中にさまざまな仕掛けをして、最後のネタばらしで「え、そうだったの?」と、TVerの見逃し配信をもう一度見てもらう流れを作っている回もあります。

ちょっと前で言うと、アンタッチャブルのコンビ復活を事前告知なしのサプライズで行いました。これまでテレビでは、「テレビ初公開!」のように事前の話題を作ることがセオリーだったので、周りのスタッフに理解してもらうのは大変でしたが、オンエア後、絶対にSNS上で盛り上がるだろうという自信があったんです。その盛り上がりを見た人たちが、見逃し配信で番組を見てくれる仕組みが整っていたので、まさに、見逃し配信の存在があったからこそできた仕掛けですね。

――見逃し配信を前提とした番組作りが行われているのですね。

『クセスゴ』では『脱力タイムズ』では絶対にやらないような、もっと言うと今どきのテレビですらやらないようなベタなアプローチもあえて盛り込んだりしています。

それは番組に出演している人、そのものを面白がって欲しいからこそ。『クセスゴ』ではキャラクターを押し出した芸人さんでも、ネタの中で「え、この人なんだろう」というふうに芸人さん自身に興味を持って、もう一度見返して、さらに好きになってほしいという思いが根本にありますね。

――今後、TVerに期待することや企画などがあれば、教えてください。

番組を作るスタッフが、その回の見どころを解説する企画があると面白いなと思います。元テレビ東京の佐久間宣行プロデューサーに代表されますが、引きつけられるようなキャラクターを持った裏方の人が「これ、めっちゃ面白かった」って自らの言葉でしゃべっていると、「そうなんだ!」という感じで、番組を見てくれるんじゃないかなと。

――出演者、制作者、番組に関わる人たちの姿や思いを感じられると、さらに見たい番組がどんどん増えていきそうですね。

頭の中で思いついたことを放送に乗せるまでのプロセスって、 実はすごく大変なんです。編成の人がまず放送枠を与えてくれて、営業の人がスポンサーを探してきてくれて、広報の人が宣伝してくれて……。制作に直接関わるスタッフだけでなく、いろんな人の努力と思いが放送ごとにあるんです。

僕がADだったころに比べたら、番組の制作技術や伝え方はどれもすごく進歩している。技術と同じように、人も新しい人のほうが進歩していると、僕は希望を持っています。だからこそ、ちょっとでもいいので見てほしいです。テレビって、どれもよくできてると思うんですよ。細かく言えばいろいろ思うところはあるかと思うんですけど、どれもよく見ると面白い。だから、土下座してお願いしてもいいくらい(笑)。少しでも見てほしいと思います。

名城ラリータさん プロフィール
フジクリエイティブコーポレーション(FCC)所属のテレビプロデューサー・ディレクター。沖縄県出身。『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』ADを経て、現在はフジテレビ『千鳥のクセがスゴいネタGP』『全力!脱力タイムズ』で総合演出を担当する。

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