野々村芳和、五郎丸歩の鋭い質問に「良いこと聞いてきたな」『五郎丸歩が学ぶ』

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野々村芳和、五郎丸歩の鋭い質問に「良いこと聞いてきたな」『五郎丸歩が学ぶ』

野々村芳和Jリーグチェアマンが、6月25日に放送されたSBS開局70周年記念番組『五郎丸歩が学ぶ〜ビジネスの流儀〜』(SBSテレビ、毎週土曜7:00~)に出演し、ラグビー界のレジェンド五郎丸歩と対談を行った。

MCの五郎丸がさまざまな経営トップと対談し、目からうろこの経営術、哲学やノウハウなどを学んでいく同番組。ゲストの野々村チェアマンは、清水東高出身、前職・北海道コンサドーレ札幌社長時代に売上を3倍以上に伸ばした実績を持ち、Jリーガー出身としてのチェアマンは史上初となる。

五郎丸は、選手から経営の道へと進んだ野々村を前に「聞きたいことが山ほどあります」と笑顔で迎える。

2013年にコンサドーレ札幌の社長に就任した野々村。クラブはJ2に降格したばかりで、経営的にも苦しい状況だったという。当時、クラブの売り上げは10億円ほどの予算を立てていたが、サッカーの世界では10億円の予算では、J1にはほぼ上がれない規模なのだとか。そこで、野々村は、「まずJ1に戻ること」を目標に掲げ、経営者として一定レベルの売り上げ(25奥~30億)を確保し、そのレベルに到達するためにはどうしたらよいかを考えたという。

中でも、一番大事だと思ったのは「サポーターを一緒に仲間だとすること」。

五郎丸から、サポーターとの付き合いは現役の時とは全く違ったのかと問われた野々村は、「サポーターがスタジアムの‎良い空気をつくってくれると、“勝てるな”という感覚を現役の時に感じていた」と述べ、「サポーターの皆さんは仲間、簡単に言えば社員みたいなもんだと思うようになりました」と語った。

サポーターとしては「コンサドーレは強い、もっとやれるはず」という気持ちがあるから、試合で勝てないとブーイングが起こったりして、会場の空気が悪くなる。サポーターとクラブの空気が悪くなると、多分勝てないので、それを防ぐうえでも、野々村はサポーターに現状を共有したのだ。サポーターたちも、クラブの経営状況や目標を知ることで、「すぐにうまくいかなくてもこれから成長していけばいい」という気持ちになり、クラブを取り巻く雰囲気はだいぶ良くなるので、サポーターにもこの状況を“自分事”にしてもらって、立ち位置を合わせることを一番最初にやったのだ。さらに、野々村はスポンサー各社にも全て話し、「今、売り上げがこのぐらいです。もっと上に行きたいですか、どうしますか」といった会話をよくしていたという。

このほか、地元メディアにファンをつくることにも力を入れた。社長就任当初、とにかくクラブのメディア露出数が少なかったそうで、特に地上波放送では、コンサドーレがJ2に落ちていたことも影響があったようだ。とはいえ、プロモーションにかけるお金も無いので、「どうやってメディアに扱ってもらうか、結構何でもやりました」と振り返る。

野々村は「各局にサッカーやラグビーが好きな人をいかにつくれるかが相当重要」とし、「広報担当者はそういう人をコミュニケーション取りながら育てていくことも、クラブとしてやっていったほうがいいと思う。お金があるなら色々なプロモーションが出来るけど、無い中で一番威力があるのは、ローカルの地上波だと思うので、その人たちとどう作っていくか、ということを考えたほうがいいな」と語った。

そんな中、野々村がメディアで取り上げてもらうために行った企画は、開幕戦が3月10日にかけて、サトウさんは310円で観戦できる「サトウさん限定特別観戦チケット」や、野々村社長がサポーターのおねだりを叶える「ののさんおねだり回数券」、サポーターの人気投票で練習試合のスタメンを決める「AKB的スタメン投票」といったユニークなものばかり。ちなみに、“サトウさん”は、約800人集結したそうで、五郎丸も「5月60日(ごろーまる)がないのが残念です」と笑顔を見せた。

こうした話題作りに加え、2016年からは広告代理店とも契約を結び、前年は6試合だった地上波での放送を20試合まで拡大。プロモーションの効果もあり、コロナ前までは、入場者数は右肩上がり。クラブの売り上げの中でも大きな割合を占める入場料収入のアップにつながった。

現在Jリーグは、「DAZN」(有料配信)と長期契約をしており、地上波ではあまり放送がない状況。これについて五郎丸は、「これからJリーグ離れが進む一方、コアファンはDAZNで追うことはできるんですが、すそ野を広げるといった意味では課題感が残るんじゃないかと思いますが、どういう戦略をお持ちですか?」と問う。

野々村は「すごく良いこと聞いてきたな(笑)。もちろん有料放送は重要だし、世界の流れもそうなんだけど、日本、特に地方においては、まだまだローカルの地上波で、その地域のクラブを出していくことは絶対必要だと思います。すそ野を広げる観点でも、クラブを成長させる時の仲間として、その地域にあるローカルの放送局が絶対仲間になるはずなので、できる限りそういう方向に変えていきたいと思っています」と明かした。

続けて「一昔前は、日本国内において『全国の皆さんにファンになってもらう』のが一番いい、みたいな空気感だったけど、今、Jリーグは地域でスターになればいいと思ってるんです。だからコンサドーレ札幌は、北海道の人たちが一番大好きなクラブになるためには何をするか、ということになると、地域のメディアの皆さんとやっていくことが大事なんだと思います」と力を込めた。

番組では、野々村がチーム名に“北海道”を加え、“北海道コンサドーレ札幌”に改名した理由についても直撃。これには、北海道を代表するチームだと思っていたけど、世間では「札幌のチームでしょ」という風にみられていたことと、将来的に大きなクラブになり、世界に向けて出ていくときに札幌より北海道の方が伝わりやすいところから、“北海道”をつけたという。

また、世界進出も視野に入れたクラブ改革を行った野々村は、東南アジアからのスター選手を獲得。最終的に数十億の売り上げを目指すときに、「北海道や日本だけでビジネスをしていても仕方がない。だったらまだ他のクラブが進出していないところに、早めに仕掛けた方がいいと思ったんですね」と振り返る。

スター選手の活躍は、当時の日本とベトナムの首脳会談でも話題にあげられ、クラブホームページへのアクセスが急増。ベトナムで展開している日本企業がグループ会社の看板を掲載し、スタジアムの広告にも変化が生まれたり、ベトナム国内で試合が生中継で放送されるなど、新たなマーケットの獲得にも成功。北海道にも多くの観光客が訪れるようになり、地域全体にも大きな経済効果をもたらした。

五郎丸は「ラグビー界としてもやっていかなくてはいけない。(ラグビーは)試合数が少ないのがネック。アジアというマーケットには進出しなければいけない。海外の力をかりて新たなマーケットを作っていくというのは一つの手かな、と思っています」と占めた。

次回7月2日は、野々村を迎えての【後編】が放送される。

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