初のBLドラマレーベル「トゥンク」東香瑠プロデューサーが明かす熱い思い「BLは一過性のものではないと確信」

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2022年春、株式会社KADOKAWAからBL(ボーイズラブ)ドラマ作品に特化したBLドラマレーベル「トゥンク」が誕生。作品はMBSの1年限定ドラマ枠「ドラマシャワー」で現在は『不幸くんはキスするしかない!』に続く第2弾として、『先輩、断じて恋では!』(MBS、毎週木曜25:29~ほか)が放送中。6月23日には第2話が放送されます。

レーベルを設立し、“BL実写ドラマを連続で作る”というこれまでにない試みに挑んだのは、「BLファン歴20年以上」という東香瑠プロデューサー。企画立ち上げから放送開始まで、一体どのような経緯があったのか。自身がBLファンだからこそ感じる実写化への不安、喜び、希望についても、本音で語ってもらいました。

――まずは、レーベル設立の経緯について聞かせてください。

私はもともとエンタメ会社にいたのですが、20年くらい前から趣味として“BLが好き”ということが前提にありまして。KADOKAWAが長くBL作品を作っていることも知っていましたし、「BL実写に関するコンテンツを作りたい」という思いを持って4年ほど前にこの会社に入社しました。そこで「ぜひBLをやりたい!」と発案したのが始まりですね。熱量のまま、企画書を作りはじめて(笑)、各所に見せて回ったという流れでした。

――企画が動き出してからは、順調に進んだのでしょうか?

おっさんずラブ』やタイBLのヒットもあって、実写BLに需要があることは目に見えてわかる状態だったので、「実写BLをやりたい」ということに対する反対はまったくなかったですね。コミックや小説でBLヒット作品を数々生み出してきている会社ですし、「せっかくBLをやりたい人がいるんだから、率先してやるべきだ」と。私が「BLファンはこんなにいるよ!」と猛烈にアピールしたというのもあるかもしれませんが(笑)。

『不幸くんはキスするしかない!』より
『不幸くんはキスするしかない!』より

第1弾『不幸くんはキスするしかない!』でつかんだ手応え

――なるほど(笑)。第1弾『不幸くんはキスするしかない!』(通称:ふこキス)の放送が始まってからの反響などはいかがですか?

“BL好き”として立ち上げた企画だからこそ、「同じBL好きの仲間にどう見られるかな?」という不安があったので、放送後の反響を見て「あぁ、良かった」と安心しました。一つひとつのレビューがすごく嬉しかったですし、頑張ってよかった、もっと頑張ろうと思えました。

――BLコミックは数多くありますが、ドラマ化するときに重視している点を教えてください。

1作目と2作目に関しては、ある種、レーベルの指針みたいなものにしたかったんです。それに加えて、わかりやすくラブコメ作品をドラマ化することでで、BLファンだけではないところまでBLの間口を広げられるんじゃないか、という思いもありました。

――実写化との親和性が高いというところもありそうですね。

キャラクターが立っているかどうかは、実写化するにあたって大事なポイントだと思います。演じる俳優さんがキャラクターを掴むことが大切。特にラブコメ作品では、キャラの特徴だったり、わかりやすいフックがあったりすると、演技をする上でも映えやすのではと思っています。

『不幸くんはキスするしかない!』より
『不幸くんはキスするしかない!』より

――キャスティングのポイントについても聞かせてください。

もちろんビジュアル面もありますが、キャラクターの内面的な部分も大事にしながらキャスティングすることが一番大切ですよね。プロデューサーの独断ということではなくチームでいろいろと話し合いながら考えますが、共通認識としてあるのは、見た目だけではない“キャラクターとのマッチング感”かなと思ってます。

『先輩、断じて恋では!』より
『先輩、断じて恋では!』より

――『先輩、断じて恋では!』(通称:せぱ恋)に主演する内藤秀一郎さん、瀬戸利樹さんの起用理由を教えてください。

内藤さんに関しては、人間離れしたスタイルの良さ・完璧なカッコよさがある一方で、ご本人にはフニャッと笑うような可愛らしさがあって。内包的な柳瀬とのマッチ度がポイントでした。瀬戸さんはとにかく瞳の力がすごくて、視線の強さとキュン顔のギャップがまさに金田ですね。可愛らしさの中にある“芯の強さ”のようなところも金田にマッチしていて、起用理由の一つでした。

――出演者とはプロデューサーとしてどのようなお話をされているのでしょうか?

私は1人のBL好きとしてもBL制作に携わらせていただいている、ちょっと変わった立ち位置なので、原作好き・BL好きから見るキャラクターの魅力だったり、どういうところに萌えを感じているか、といった視点でお話することも多いです。現場にいると、「今のシーンはBLファン的にどうでしたか?」と俳優さんから聞いてくれることもありますし、そうやって監督やキャストがBL好きからの反応を気にしてくれることはとても嬉しくもありますね。

――『せぱ恋』の見どころを教えてください。

『せぱ恋』はお仕事ドラマでもあるので、オフィスのメンバーとの絡みもありながら、仕事を通じて2人の恋が進んでいきます。現場では本当に終始内藤さんと瀬戸さんが楽しそうに演じてくれていて、2人のコンビネーションや距離感が作品にもしっかり出ていると思います。また2人の恋にかかわってくる同僚のキャラクター達も魅力的に見せられていると思うので、そこにも注目して楽しんでいただけたら嬉しいです!

――『せぱ恋』も含め、「トゥンク」の作品を制作する上で、見せ方のこだわりなどはありますか?

他のドラマと同じように、監督の演出だったり、原作の持ち味だったりを活かしていくので、「トゥンクだからこう、BLだからこう」ということはないのかなと思います。もちろんBLファンに受け入れられる作品を作りたいという思いはありますけど、BLファンも十人十色でいろいろな作品を楽しんでいますし、BLドラマとしても幅広い様々なドラマを作っていけたらと思っていますね。

――今後も、どんどん新しいことにチャレンジしていきたいですか?

そうですね。第1弾、第2弾と放送させていただいていますが、それ以降も、またちょっと毛色の違う作品などもやっていきたいと思い準備中です。「今度はこれをやるんだ!?」と驚いてもらえるような作品もやれたらいいなと思っています。

『先輩、断じて恋では!』より
『先輩、断じて恋では!』より

レーベルにしたのは「今後もずっとやっていく」という意思表示

――レーベルがスタートして、よりBL作品に可能性を感じているのではないでしょうか?

BLファンの熱量は昔からすごく大きいですし、これは一過性のものではないと確信しています。今、実写ドラマが増えたことで急激に注目を浴びていますけど、「BLファンはずっと前からいるからね」というのは、私自身、よくわかっているので(笑)。ただ単に実写ドラマを作るだけではなく、あえてレーベルにしたのは「今後もずっとやっていくよ」という意思表示でもありますね。

――これからも、BLファンの思いを背負って走っていくわけですね。

そんな、そんな(笑)。でも、みんなに楽しんでもらえるものを作りたい、ということがすべてです。ドラマを見てくれた方の感想が一番の原動力なので、よい反応があるとそれだけで疲れから復活できるんです。それに、私はBLファンには予備軍がたくさんいると思っていて。その方たちをBL好きにしていくことで、BLの未来も広がっていく。ファンが増えればできることも増えるし、そのためにも「みんなBLファンになってね」って(笑)。もっともっと先の景色が見たいので、これからもBLファンの方に喜んでもらえる作品作りをしていけたらと思います。

(取材・文:nakamura omame)

<『先輩、断じて恋では!』第2話あらすじ>
飲み会の帰り道に先輩の柳瀬淳(内藤)とキスをしてしまってから、戸惑いを隠せず悶々とした日を送る金田優希(瀬戸)。そんな中、柳瀬のもとには出来上がったCGを明日の朝までに修正してほしいとクライアントから急な依頼が舞い込む! 無茶な要望にクオリティを諦めようとする柳瀬だが、それを見た金田は自分も手伝うことを提案。2人きりで深夜残業することに……!?

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