イビチャ・オシムの素顔を羽生直剛や佐藤勇人ら愛弟子が証言「誰よりも怒られたのは僕」

左から)羽生直剛、佐藤勇人
左から)羽生直剛、佐藤勇人

6月11日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、5月1日に80歳で亡くなった元日本代表監督のイビチャ・オシムを特集。日本サッカー界に偉大な功績を残したオシムの素顔とサッカー哲学を、愛弟子の羽生直剛佐藤勇人らの証言で紐解いていった。

2003年からジェフユナイテッド市原の監督に就任したオシムは、当時低迷していたクラブの改革に着手。2005年のヤマザキナビスコカップではクラブに初のタイトルをもたらすなど、チーム強化を成功させ、優勝争いの常連へと成長させる。2006年には南アフリカW杯を目指す日本代表の監督に抜擢。病に倒れ、志半ばで退任を余儀なくされるが、その革新的な戦術と練習法は日本サッカー界に大きな影響を与えることとなった。

羽生直剛
羽生直剛

ジェフ千葉でオシムの指導を受けた元日本代表の羽生と佐藤は、オシムの第一印象について「でかい」と回顧。190cm以上あるオシムにとって日本の選手は小柄に見えたようで、羽生や佐藤たちはオシムに「自転車より小さいじゃないか」と言われてしまったのだという。選手たちの前でチーム構想や優勝への意気込みなどを語ることはなく、不安な船出となったオシム体制。しかし、世界的な指導者のチームづくりはやがて結果となって表れる。

当時のJリーグではドリブルで相手を翻弄したり、華麗なテクニックでパスを通したりと、かっこいいプレーを目指す選手が多かったが、オシムが最初に打ち出したのは、その対極とも言える泥臭い“走るサッカー”だった。佐藤は「走らないとサッカーは成り立たないんだというのが1年目からありましたね」と振り返る。表面的なプレーを嫌っていたオシムは、羽生にもとにかく前に走るように指導。羽生は「前に行けるのに(ボールを)浮かしたり、切り返したりとかは、その場では相手をかわしたことになりますけど、“サッカーはサーカスじゃない、今前に行けただろ?”みたいな。そういう指導を受けていました」と、オシムの言葉を伝えていた。

オシムは走ることを徹底させると同時に、ポジションごとに最多12色のビブスを使った戦術練習を導入。“選手が考えて走るサッカー”を追求した。コーチにすら当日まで練習内容を知らせなかったこともあったそうで、選手たちはこれまで経験したことのないオシムのやり方に困惑。佐藤は「自分たちが当たり前だと思ってたことが、当たり前じゃなかった」と当時の心境を吐露し、「日本では自主練をすれば評価されるじゃないですか。でも、オシムさんは“俺の練習を100%やれば自主練は必要ない。自主練をやれるくらいパワーが残っているのは、俺の練習を100%やれていないからだ”といって、自主練を評価しませんでした」と、一例を挙げる。

オシムが組んだ日々の練習はかなりハードだったそうで、羽生は「明日の練習が怖くて寝付きが悪いみたいな時もあった」と明かす。それでも、オシムの指導によって超攻撃的なサッカーに変貌を遂げたジェフは、次第に勝利を重ねていくことになる。得点力は前年から1.5倍に跳ね上がり、就任1年目にも関わらず、最終節まで優勝争いを繰り広げるほどに急成長していた。

佐藤は「監督なので普通は次の試合に出るメンバーを見るじゃないですか。でもオシムさんは、そっちはコーチに見させて、試合に出ないメンバーを見るということもされていた。でも見ていないと思って手を抜いているとしっかり見られているという(笑)」と、すべての選手を平等に扱うオシムのやり方を説明。これには、羽生も「怒り方も一緒だし、褒め方も一緒」と同意していた。

佐藤勇人
佐藤勇人

実績や年齢を問わず全ての選手にチャンスを与えることで、当時まだ若手だった巻誠一郎阿部勇樹も才能を開花させる。VTRで番組に出演した阿部は、オシムとのエピソードを披露しながら、意外な法則があったことを打ち明けた。阿部は「実際はわからないですけど」と前置きしながら、「2文字の人は呼びやすいから怒られやすかったんじゃないかな。羽生さんとか巻さんとか」と告白。実際その通りだったようで、羽生はオシムから「ハニュ」と2文字で呼ばれ、よく怒られていたと追懐し、佐藤と同じくVTRで出演した巻は「ジェフや日本代表を含めて、僕が一番怒られたという自負はあります。誰よりも怒られたのが僕です」と主張した。

一方、報道陣の前で選手を暗に褒めることもあったそうで、MCの勝村政信は「本当に人たらし。素敵な人」と感心。羽生も「この監督を絶対優勝させたいっていうのがすごいありました。選手にやる気を出させるというか、一人ひとりを成長させようとしているのは、みんな感じていたので」と振り返った。

左から)羽生直剛、佐藤勇人、影山優佳
左から)羽生直剛、佐藤勇人、影山優佳

番組では、そんなオシムにまつわる噂の真相をゲストの影山優佳日向坂46)が直撃。オシムが言ったとされる「お前もう点取るな」という言葉の真相については、佐藤が「これ僕ですね」と名乗りを上げ、「当時、本当に得点をたくさん取ったんですね。試合後、ロッカールームにオシムさんが来て、“今日もいいシュートだったな”と褒められると思ったら、“お前もう点取らなくていい”って言われたんですよ」と、当時の様子を再現する。

オシムの言葉の真意は、「他にやるべきことがある」というものだったそうで、佐藤は「“佐藤の仕事はそこじゃないだろう”と。相手に寄せるほうが点を取ることよりも、もしかしたら大事だったんじゃないかなとか。そういうふうに考えさせるのがうまかった」と語っていた。

次回6月18日は、オシム特集の後半戦を放送。日本代表監督就任から退任後のエピソードまで、オシムの人柄を伺い知れる裏話が続々と飛び出す。

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